内容
大きな耳に、輝く黄金色の毛、ふさふさの長いしっぽ。愛らしい動物として、昔ばなしやアニメーションのなかで活躍するキャラクターとして、または神さまのお使いとして、老若男女問わず誰もが知っている身近な動物でありながら、謎の多い“キツネのせかい”を解き明かす。
体のつくり・生息環境・食事・子育てといった生態的な特徴から、キツネと人の今昔の関わり、よりよい共生のための課題と対策まで、長年キツネの研究を続けてきた著者がわかりやすく解説。
【本書のポイント】
●種としての特徴から分布、基本的な生態、狩りの仕方、子育て、家族構成など、キツネに関する幅広い知識が満載。
●古代から現代までの多数の文献や資料、作品から、人がこれまでにキツネに抱いてきたイメージを紹介。
●「巣穴の構造」「食べものの好ききらい」「年齢の調べ方」など、国内外の専門的な調査・研究を取り上げ、著者が実際に経験したエピソードなどを交えながらわかりやすく解説。
●エキノコックス症や、農作物を食べる害獣としてのキツネ、キツネの交通事故、餌付け問題など、現代の人との軋轢や課題にも言及。問題解決に向けた取り組みを紹介し、キツネと人のよりよい関係について考察。
目次
第1章 キツネのイメージ考1キツネの昔ばなしと化けるキツネ
昔ばなしの中のキツネたち/中国からやってきた化けるキツネ/『日本霊異記』の中のキツネ
2なぜキツネは〝化ける〟のか
女の人に化ける/地蔵や墓石に化ける/狐火の正体
3キツネと稲荷
神社にいるキツネ
4西洋のずるがしこいキツネ
西洋のキツネの昔ばなし/かしこいキツネ/猟師をだます
5映画になったキツネ
ディズニーアニメのキツネ/『きつねと猟犬』/『ズートピア』のニック/日本のアニメでのキツネたち/かいけつゾロリ登場/実写映画に見るキツネの姿/アニメーションや映画におけるキツネ像の変遷
コラム「キツネ憑きとは?」
第2章 キツネのキホン
1キツネってどんな動物?
キツネはイヌのなかま/日本のキツネ/世界のキツネとそのなかまたち
2キツネの住むところ
キツネの分布~世界が舞台~/草原がキツネのふるさと/巣穴は子どものゆりかご/キツネも都会暮らし?
3キツネの一生
交尾から出産/子ギツネの成長/巣穴のひっこしと実習旅行/旅立ちからおとなへ/老いと死
4キツネの毎日
キツネの夕方/キツネの夜/キツネの朝/キツネの昼
5キツネのからだ
意外と小さくて軽い/長いしっぽと大きな耳/美しい毛皮/走りが得意
6キツネの感覚
視覚/聴覚/嗅覚
コラム「キツネの年齢はどうやってわかる?」「黒いキツネは日本にいるの?」
第3章 キツネの食事
1キツネが食べるもの
キホンの食べもの/食べものは風まかせ/食べものの好ききらい/子育ては大変/もしものときのために
2狩りの方法
空からミサイル攻撃/どこでバッタが捕れる?/鼻がききます/いろいろな狩りの仕方
3同じ食事を狙うライバル
コヨーテやオオヤマネコは苦手/キツネ界ではいじめっ子/親類たちとはご近所づきあい/キツネの天敵は?
コラム「キツネの食べものはどうやって調べる?」「キツネはなぜ靴を盗むの?」
第4章 キツネの社会
1恋するキツネ
恋のはじまり/離れられないふたり/仲良し夫婦/妻のためにエサをお届け
2キツネの家族生活
キツネは子だくさん/きょうだいはライバル/お父さんは働きもの/お姉さんは親代わり
3子別れの儀式
それは一瞬のできごと/お母さんが鬼になる/親と子の複雑な関係
4キツネの旅立ち
秋は旅立ちの季節/何百㎞もの長い旅/オスは旅立ち、より遠くへ/まだ見ぬ恋の相手を求めて/旅立ちの理由/
5キツネのなわばり
おとなりはライバル/ひとりが好きだけど、群れるのも平気
コラム「キツネをどうやって追跡するの?」
第5章 キツネと人とエキノコックス
1エキノコックス症とは
小さなサナダムシがやっかいもの/エキノコックスの複雑な生活/卵で人に感染/病気の診断と治療
2なぜ問題になったのか
日本にはいなかったエキノコックス/礼文島での流行/流氷に乗って北海道本土へ/キツネと人で感染が拡大
3エキノコックス対策と成果
駆除からはじまった対策/対策がうまくいかなかった背景/虫下し作戦の開始/虫下し作戦の成功/
4新たな心配
本州でも広がる?/知多半島の野犬での発生と定着/知多半島のエキノコックスの謎
コラム「エキノコックスにかかっているかを調べるには?」
第6章 現代のキツネと人
1害獣としてのキツネ
ニワトリはご用心/ウシへの被害/トウモロコシ大好き/野菜や果実も被害に/錯誤捕獲とは
2キツネと交通事故
北海道がワースト/なぜキツネがロードキルにあうのか/人も不幸になる/キツネにも人にもやさしい道路とは?
3餌付けと観光ギツネ
北海道の観光ギツネ/「北の国から」が餌付けブームのはじまり?/ご先祖さんも餌付け?/餌付けのもたらす影響/節度のある付き合い方とは
4キツネと人のこれからを考える
身近な隣人としてのキツネ/病気との付き合い方/野生動物と人との距離感
コラム「毛の抜けた、お化けギツネの正体は?」「キツネはペットになるか?」
著:塚田 英晴
四六判 292頁
ISBN978-4-89531-938-6
2024年1月発行
定価:本体2,200円(税別)
四六判 292頁
ISBN978-4-89531-938-6
2024年1月発行
定価:本体2,200円(税別)